安全運転のポイント

5月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成19年5月


 警察庁のまとめによると、平成18年の高速道路(高速自動車国道および指定自動車専用道路)における交通事故(人身事故、以下同じ)は、発生件数が13,803件、死者数が262人、負傷者数が22,007人でした。平成18年の全交通事故については、発生件数、死者数、負傷者数のいずれも前年より減少しましたが、高速道路だけに限ってみれば、死者数は前年より減少したものの、発生件数および負傷者数は前年よりも増加しています(表1)。
 また、高速道路における交通事故発生件数は全事故の約1.6%であり、全体に占める割合は低いのですが、交通事故100件当たりの死亡事故件数(死亡事故件数÷交通事故件数×100)をみると、全体が約0.7件に対して高速道路は約1.7件であり、約2.5倍高くなっています。
 死傷者100人当たりの死者数(死者数÷死傷者数×100)では、全体が約0.58人に対して高速道路は約1.18人で、約2倍高くなっています。このように高速道路は、いったん事故が起これば重大事故につながりやすいということをしっかり認識して、決して油断することなく慎重な運転をすることが求められます。
 そこで今回は、高速道路の事故の特徴や安全走行の基本についてまとめてみました。
 

表1 平成17年、18年の交通事故発生状況

(警察庁交通局資料による)

高速道路の事故の特徴

3分の2は追突事故
 平成18年の高速道路における交通事故を類型別にみると(図1)、追突事故が圧倒的に多く、高速道路の事故の約3分の2を占めています。追突の内容をみると、最も多いのが車線停止車への追突(4,743件)、次いで走行車への追突(3,043件)となっています。
 一方、死亡事故をみると車両単独が最も多く半数近くを占めています。車両単独とは、防護柵(ガードレール等)や中央分離帯への衝突などをいいますが、こうした車両単独による死亡事故が多いのも高速道路の事故の特徴の一つです。
 なお、高速道路では、単独事故によって本線上に停止した車に後続車が追突して多重事故につながるというケースも少なくありませんから、単独事故だからといって、決して軽視はできません。
前方不注視が最も多い
 平成18年の高速道路における交通事故を法令違反別にみると(図2)、最も多いのが前方不注視、次いで動静不注視、運転操作不適となっています。前方不注視と動静不注視で3分の2近くを占めていますが、これらが追突事故の原因の大半を占めていると考えられます。
 一方、死亡事故をみると、最も多いのは前方不注視、次いで最高速度超過、運転操作不適となっています。高速道路の全事故に占める最高速度超過の割合は5%未満にすぎませんが、死亡事故では約4分の1を占めており、スピードの出し過ぎが死亡事故の主要な原因の一つであることを示しています。
 
 
図1 高速道路の類型別事故発生件数

 
図2 高速道路の法令違反別事故発生件数
高速道路の安全走行の基本

不用意な脇見などをせず、しっかりと前方を見て走行する
 時速100キロの場合、車は1秒間に約27.7メートル走行しますから、2秒の脇見をすると約55.4メートルも走行することになり、その間に前車が減速や停止をすれば追突する危険性が非常に大きくなります。したがって、追突事故を防止するためには、なにより不用意な脇見はせずに前方をよく見て走行するとともに、車間距離も十分に保持しておく必要があります。ただし、視線が前方の1点に集中すると、後方の状況がつかめないことに加えて、意識がぼんやりしてきたり眠気を催すこともありますから、適宜ミラーをチェックするなどして視線を1点に固定しないようにします。
 なお、車間距離については、速度をメートルに置き換えた距離(例えば時速100キロであれば100メートル)が安全確保のための目安とされています。
スピードを出し過ぎない
 スピードを出せば出すほど1秒間に走行する距離は長くなり、ブレーキをかけてから車が停止するまでの制動距離も長くなりますから、それだけ追突事故を起こす可能性が高くなります。また、遠心力もスピードに2乗して大きくなりますから、スピードを出し過ぎるとカーブを曲がりきれずに防護柵等に衝突する危険が高まります。さらに、スピードの出し過ぎはちょっとしたハンドルやブレーキ操作でスリップを招く危険性も高めます。
 したがって、法定最高速度を守るということが基本となりますが、法定最高速度については、高速自動車国道と指定自動車専用道路では異なるという点に注意が必要です。普通自動車の場合、高速自動車国道では、標識や標示で速度が指定されていない場合は時速100キロですが、指定自動車専用道路の場合は、標識や標示で速度が指定されていない場合は一般道路と同じ時速60キロです。
 また、法定最高速度を守っていれば安全ということではありません。例えば雨天時や強風時などはスピードを落として走行する必要がありますから、状況に応じてスピードをコントロールすることが大切です。
 なお、悪天候時などには、標識等で速度規制が行われることがよくありますから、速度規制が出されたときは必ずそれに従わなければなりません。
ハンドルやブレーキ操作は慎重におこなう
 高速道路では、ハンドルやブレーキの操作ミスが重大事故につながりますから、ハンドルは小刻みに切る、ブレーキを踏むときは数回に分けて徐々に踏むといった、慎重な操作が必要です。特にカーブでハンドルとブレーキの同時操作を行うとスリップする危険が大きくなりますから、カーブでは手前で十分減速して、カーブの途中ではブレーキ操作をしなくても済むようにします。
減速や停止をするときは後続車にはっきり知らせる
 高速道路での減速や停止は、追突される危険が非常に大きいので、前方が事故や渋滞、道路工事などのためにやむを得ず減速や停止をするときは、あらかじめブレーキを数回軽く踏んだり、ハザートランプを点灯して後続車にはっきりと減速や停止の意図を知らせるとともに、徐々に減速し停止します。
その他の留意点
長時間の連続運転は注意力の低下や居眠り運転の要因になるので、少なくとも2時間に1回は15分以上の休憩をとる。
豪雨や濃霧等で視界が悪いときは、無理をせずにサービスエリアやパーキングエリアなどの安全な場所に一時避難して様子を見る。
運転者や助手席同乗者はもちろん、後部座席の同乗者にも必ずシートベルトを着用させる。
深夜から明け方は死亡事故が多発するので、この時間帯の走行はできるだけ避ける。
 高速道路は車のために設計された道路であり、一般道路に比べればたいへん走りやすく快適な道路です。しかし、安全走行の基本を忘れると重大事故を招いてしまう道路でもありますから、決して油断することなく、基本を守った慎重な運転を心がけましょう。