安全運転のポイント

10月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成18年10月


 交通事故の要因にはさまざまなものがありますが、相手を見落としたり、相手に気づくのが遅れて事故になったというケースも少なくありません。これは立場を変えてみれば、見落とされることがいかに危険であるかを物語っています。したがって、事故に遭わないようにするためには自車を目立たせ、早めに相手に気づかせる必要があります。
 そこで今回は前回に続き、防衛運転のポイントの一つである「見せる」(自車を目立たせたり、相手に見せる)ことについて考えてみましょう。

自車を目立たせる
 薄暮時に、ヘッドライトを点灯せずに乗用車を運転して片側1車線の道路を走行していたAさん(32歳)は、道路を横断してきた自転車との衝突事故を起こしてしまいました。幸い死亡事故には至らずにすみましたが、自転車に乗っていたBさん(68歳)は骨折等で全治3か月の重傷を負いました。
 この事故の場合、まず、車が接近しているにもかかわらず、なぜBさんが横断したのかが問題になりますが、Bさんは衝突する直前までAさんの車に気づかなかったということでした。
 事故当時は、日が暮れてあたりが薄暗くなった頃で、ほとんどの車はヘッドライトを点灯していましたが、Aさんの車は点灯していませんでした。
そのためBさんは、ヘッドライトを点灯した数台の車が通過した後、ヘッドライトが途切れたので、車は来ていないと思って横断を開始したのです。
 一方、車を運転していたAさんのほうは、Bさんの自転車に気づいていましたが、自車が接近しているのだから、まさか横断してはこないだろうと思っていたということです。そこには「Bさんは自車に気づいているはずだ」という思い込みがあったと考えられます。また、ヘッドライトを点灯していなかったことについては、薄暗くはなっていたものの、ヘッドライトを点灯しなくても見える状況だったので点灯しなかったということでした。
 
●ヘッドライトには自車を目立たせる役割もある

 この事故はBさんがAさんの車を見落としたことも原因の一つですが、それよりもAさんが薄暮時にもかかわらずヘッドライトを点灯しないで走行していたことのほうにより大きな原因があると考えられます。実際、Aさんがヘッドライトを点灯していたら、この事故は起こらなかったでしょう。
 ここで留意しておかなければならないことは、ヘッドライトの役割についてです。ヘッドライトの第一の役割が自車の視界を確保するという点にあることは当然ですが、しかし、それだけではなく周囲に対して自車の存在を知らせるという役割もあるということです。特に周囲が見えにくくなる薄暮時には、自車を目立たせ、相手に存在を知らせるということは、事故を防止するうえできわめて重要なことであり、その手段がヘッドライトの点灯なのです。その意味では、「ヘッドライトを点灯しなくても見える状況だったので点灯しなかった」というAさんの考え違いが、この事故の真の原因といってよいでしょう。
 「秋の日は釣瓶落とし」といわれるように、これからはどんどん日暮れが早くなっていきます。「薄暮時は早めに点灯」を徹底していきましょう。

自車を相手に見せる
 この数年、人身事故で多いのは「追突事故」と「出会い頭事故」ですが、このうち「出会い頭事故」の大半は見通しの悪い交差点で発生していると考えられます。
なぜ見通しの悪い交差点で多発しているかといえば、互いに相手が見えないからです。したがって、出会い頭事故を防止するためには、確実に一時停止をして左右の安全確認を行うことが基本であることは言うまでもありませんが、それとともに相手に自車を見せて自車の接近を知らせるということも重要なポイントになります。
 
●まず停止、次に見せて、最後に見る
 どのようにして相手に自車を見せるのか、その方法をご説明しましょう。
@ 一時停止線で停止する。一時停止線のない場所では、車の先端部分が交差道路にはみ出さない位置で停止します(図1)。
A 一時停止線からでは十分な左右の安全確認ができない場合が多いので、徐々に進行して車の先端部分が少し交差道路に出た時点で停止します。この位置からでも十分な左右の安全確認はできませんが、これは相手に自車の存在を見せることが目的です。これにより相手は自車の接近を知り、自車の動向に注意するようになります(図2)。

この段階で、交差道路にはみ出し過ぎると道路の端を進行してくる自転車やバイクと衝突する危険がありますから、ほんの少しはみ出す程度にします。
B 一時停止してから、再び発進し左右の安全確認ができる位置まで徐々に進行して停止して安全確認を行います(図3)。
 このように見通しの悪い場所では、まず安全な位置で停止する、次に「見せる」ために停止する、最後に「見る」ために停止するという多段階の停止が、出会い頭事故を防止する最も確実な方法です。
 
●夜間はヘッドライトを見せる
 夜間の見通しの悪い交差点でも基本は上記と同じですが、自車の道路側に一時停止が義務づけられていない交差点に接近するときは、交差点の手前で減速するとともに、ヘッドライトの上下を切り替えるようにします。そうすることで交差道路側の相手に自車の接近を知らせることができ、飛び出しなどの防止に効果的です。
 
 運転に必要な情報の9割以上は目によって得られるといわれています。これは「見る」ことがいかに重要であるかを示していますが、視点を変えれば「見る」だけでなく、「見せる」ということも非常に重要であることを示しています。したがって、「見る」だけでなく「見せる」ということも常に念頭に置いた運転を心がけましょう。


合図も見せることに繋がります

ウィンカーやストップランプなどで、自車が「どう行動しようとしているか」を知らせることも重要です。
相手の車を意識した、早めの合図を心がけましょう。