安全運転のポイント

6月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成18年6月


 6月は梅雨の時期であり、雨天時に走行することが多くなります。雨天時は視界が悪くなり危険の発見が遅れやすくなるうえに、路面も滑りやすくなりますから、特に慎重な運転が必要となります。そこで今回は、雨天時の安全運転のポイントについて考えてみることにしましょう。

雨天時の事故事例
 Aさんが営業のため車で出かけようとしていると、上司から「雨が降ってきたのでこれから得意先まで送ってくれないか」と頼まれた。そこでAさんは、上司とともに傘を差して駐車場に向かい
車に乗り込んだ。道路は、雨のせいか、いつもより渋滞していた。Aさんは片側2車線の道路の走行車線を走行していたが、上司が「約束時間に遅れぎみなのでちょっと急いでほしい」と言ったので、進路変更をして追越車線を走行することにした。
 車に乗り込むとき傘の雨滴をよく払わなかったためか、しばらく走るうちに車内のガラスが曇り始めた。Aさんがデフロスターのスイッチを入れようとして操作パネルに注意を向けている間に、先行車が右側のガソリンスタンドに入るため右ウインカーを出して停止した。
 前方に視線を戻して先行車の停止に気づいたAさんは、そのまま進行すると追突のおそれがあるので、左側の車線に進路変更すべく慌てて合図を出した。そして左のドアミラーを見たが、ドアミラーは水滴が付着していて見づらかった。しかし、十分確認している余裕がなく、Aさんはチラッと見ただけで大丈夫だろうと判断し、車線変更を行った。
 その結果、左側車線を走行してくる二輪車を見落としてしまい、進路変更をした直後に二輪車と衝突してしまった。
事故に至ったプロセス
 事故に至ったプロセスを整理してみると、次のようになります。
  上司に得意先まで送ってほしいと頼まれた。
  いつもより渋滞していた。
  急いでほしいと言われ追越車線を走行した。
  車内のガラスが曇ってきた。
  デフロスターのスイッチを操作した。
  先行車が停止したのに気づくのが遅れた。
  合図を出した後、左側車線の状況を十分確認しないまま進路変更しようとした。
  左側車線の後続二輪車と衝突した。
事故の原因
 この事故は、Aさんが進路変更するときにドアミラーを見たものの、後続車の有無の確認を十分にしなかったために起こったものです。雨天時は水滴のために特にドアミラーが見えにくくなり、車体の小さい二輪車や自転車を見落としやすくなります。そのため進路変更時などは、十分に確認する必要がありますが、余裕のなかったAさんはチラッと見ただけで「後続車はいない」と判断してしまいました。雨天時は渋滞することもよくありますから、時間も速度も車間距離も余裕をもたせて走行するとともに、進路変更時はしっかりと後続車の確認を行うことが大切です。
雨が降り始めたら、スピードを落とす
 舗装道路では、雨が降ると表面のほこりがオイル状になり、ちょうど路面に油をひいたような状態になるためスリップしやすくなりますから、雨が降り始めたら、すぐにスピードを落とすようにします。
 また、雨天時は路面が濡れているため、停止距離が長くなりますから、車間距離も晴れた日より長くとるようにします。
歩行者や自転車に注意する
 雨が降りだしたときに、最もあわてるのは歩行者や自転車です。車の中にいれば雨に濡れる心配はありませんが、傘を持っていない歩行者や自転車は濡れてしまいます。そのため雨宿りの場所を探して、急に走りだして道路を横断するケースもよくあります。自転車の場合も同じで、雨が降り始めるとスピードを上げて走りだし、後方の確認をせずに急に車線を変更したり、一気に道路を横断することもよくあります。雨が降り出すと、歩行者や自転車が予想外の行動をとるということを頭に入れて、歩行者や自転車の動きにもよく目を配る必要があります。
 また、水や泥を跳ね上げて歩行者や自転車にかけることのないように、速度を落とすなどの配慮も必要です。
路面の状態をみて歩行者や自転車などの動きを予測する
 雨天時は路面に水たまりができるため、歩行者や自転車が水たまりを避けて車道に出てきたり、車道の左側を走行する二輪車が路面の水たまりを避けようとして右に膨らんでくることもあります。したがって、前方の路面の状況に注意し、歩行者や自転車などがどのような動きをするかを予測しながら運転することが大切です。
見通しの悪い交差点や進路変更時などはしっかり安全確認を行う
 雨天時は視界が悪くなるため、安全確認をしっかりと行う必要があります。特に見通しの悪い交差点では確実に一時停止して左右の安全を確認します。また、進路変更時や左折時、発進時には、後方から二輪車や自転車が接近していないかどうかを十分に確認する必要があります。
急ハンドルや急ブレーキは禁物
 急ブレーキや急ハンドルなどの「急」のつく運転をするとスリップする可能性が大きくなります。特にカーブでは大変スリップしやすくなりますから、あらかじめカーブの手前でスピードを十分に落として、カーブ走行中のブレーキ操作はできるだけ控え、ハンドル操作も最小限にして慎重に走行します。
高速道路ではスピードの出し過ぎに注意する
 雨天時の高速道路でスピードを出し過ぎると、路面にできた水の膜のうえを水上スキーのようにタイヤが滑走して、ハンドルもブレーキも効かない「ハイドロプレーニング現象」が発生する危険があります。したがって、雨天時の高速道路では規制速度を守り、スピードを抑えて運転します。また、大型車に接近して走行すると、大型車のはねあげる水しぶきで一瞬前方が見えない状態になることがありますから、大型車の後方を走行するときは、特に車間距離を十分にとる必要があります。
出発前の車両点検を確実に行う
 タイヤの溝がすり減ると、停止距離が一層長くなるだけでなく、スリップする危険も大きくなります。また、ワイパーが正常に作動しないと視界が確保できませんから、梅雨の時期には特に出発前に、タイヤの溝やワイパー、エアコンやデフロスターの作動状態などの車両点検を確実に行う必要があります。