安全運転のポイント

10月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成17年10月


 日が落ちるのが早くなり、日に日に夜が長くなってきました。今月は、夜間走行時の注意点についてまとめてみます。
 平成16年の交通事故発生状況を昼夜別でみると、交通事故(人身事故)の発生件数は昼間のほうが圧倒的に多く(約2.6倍)なっていますが、死亡事故だけを取り出してみると、夜間のほうが多くなっています。また、人身事故1,000件あたりの死亡事故件数を見てみると、夜間は昼間の約2.8倍と多くなっており、昼間に比べて夜間は死亡事故が発生しやすいことを示しています(図1)。この傾向はここ数年変わっていません。


なぜ夜間は死亡事故が発生しやすい?
 なぜ夜間は死亡事故が発生しやすいのでしょうか。その要因を考え見ましょう。
■スピードを出しやすい
 まず、夜間は昼間に比べて交通量が少ないことや、実際よりもスピードを遅く感じやすいためにスピードを出しやすいことがあげられます。車が衝突したときの衝撃力は、スピードの2乗に比例して大きくなりますから、スピードが2倍になれば衝撃力は4倍になります。スピードを出せば出すほど死亡事故になりやすいのです。
■危険の発見が遅れる
 夜間は周囲が暗いため、危険を見落としたり、危険の発見が遅れがちになります。例えば、夜間は歩行者の発見が遅れやすく、直前になってようやく歩行者に気づくというケースも少なくありません。そのため、歩行者を発見してブレーキをかけても間に合わずにはねてしまう危険性が高いのです。
■漫然運転や居眠り運転になりやすい
 平成16年における死亡事故の原因のトップは「漫然運転」でした。夜間は特に、仕事の疲れなどから漫然運転になりやすいものです。また、深夜は眠気に襲われやすく、居眠り運転に陥ってしまうおそれもあります。居眠り運転になれば、センターラインをはみ出して対向車と正面衝突をしたり、ノーブレーキで停止している車に追突するといった大事故となる危険性が大きくなり、それだけ死亡事故にもつながりやすくなります。
■飲酒運転が多い
 飲酒運転も死亡事故の大きな要因となっています。酒を飲んで運転すれば、正常な注意力や判断力が失われるだけでなく、運転操作も荒くなります。さらに、危険に対する感受性も低下して危険を危険とも感じずに無謀な運転をしがちです。それが死亡事故につながることはいうまでもありません。
夜間特有の危険要因
 夜間は昼間とは違った特有の危険要因もあります。その主なものをあげてみました。
運転者も歩行者や自転車なども「こんな遅い時間には車(人)は来ない」と思い込み、安全確認を怠ってしまったり、信号無視などの危険行為をしてしまうことがある。
ヘッドライトが明るいため、運転者も歩行者や自転車なども互いに、相手は自分に気づいており「車の進路に出てこないだろう」あるいは「停止してくれるだろう・よけてくれるだろう」などとの思い込みから無防備なまま走行、歩行・横断しがちになりやすく、また「赤信号や赤の点滅信号の無視」につながることがある。
道路照明の少ない暗い道路では無灯火の自転車の発見が遅れたり、尾灯等を点灯していない駐車車両の発見が遅れやすくなる。また、歩行者についても同様で、色の濃い地味な服装をしている場合は特に発見が遅れやすくなる。
右折の際、ヘッドライトは右側から横断してくる歩行者を照らさないため、右側から横断してくる歩行者を見落としやすくなる(図2)。
対向車はヘッドライトしか見えないことも多いため、その速度や距離の判断を誤りやすくなる。
対向車と自車のヘッドライトが交わってセンターライン付近にいる歩行者が見えにくくなる「蒸発現象」が起こることがある(図3)。
対向車のヘッドライトに眩惑されると、一瞬何も見えない状態になる。
住宅街や飲食店付近の道路などでは酒に酔った歩行者や自転車が、急に道路を横断するなどの危険な行動をとることがある。
夜間の安全走行のポイント
 夜間を安全に走行するために、特に次のような点に注意しましょう。
夜間は、交通量が比較的少ないうえに、周囲が暗いので実際よりも速度を遅く感じやすく、スピードを出しがちになるので、ときどきスピードメーターでチェックし、スピードを出しすぎないよう注意するとともに、ヘッドライトの照射範囲内で停止できるスピードで走行する。
下向きのヘッドライトの照射距離は約40メートルだが、車の停止距離は時速60キロでは約44メートル、時速50キロでは約32メートルといわれているので、時速60キロで走行している場合は、ヘッドライト(下向き)で危険を発見してからブレーキをかけても間に合わないことになる(図4)。したがって、夜間に一般道路を走行する場合のスピードは、時速50キロ以下がひとつの目安となる。また、住宅街などでは発見の遅れやすい高齢者や無灯火の自転車に備えて、さらにスピードを落とす必要がある。
夜間は前方の状況がよくつかめないため、いつどんな事情から前車が減速したり停止するか予測できないケースが多いので、前車の急減速や急停止に対応できるだけの十分な車間距離をとる。
右折時やカーブでは、ヘッドライトの照らさない部分に歩行者などがいないかどうかをよく確認するとともに、対向車のヘッドライトが接近していたら無理に右折せず対向車の通過を待つ。
対向車のヘッドライトがまぶしいときは、眩惑されないよう視点をやや左側に移すとともに、センターライン付近に動くものの気配を感じたときは歩行者かもしれないと考えてスピードを落とす。
動きのおかしい歩行者や自転車は酔っているかもしれないと考えて、スピードを落とし動きに十分注意する。なお、薄暮時は、暗さに目が順応できず、視力が低下した状態になるといわれていますから、早めにライ トを点灯し、視界の確保に努めるとともに自車を目立たせ、他車から見落とされないようにします。