安全運転のポイント

9月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成16年9月


 警察庁がまとめた今年の上半期(平成16年1月〜6月)の交通事故統計によると、死者数は前年同期より減少しています。ただ、状態別でみると、「自動車乗車中」や「自転車乗用中」「歩行中」の死者数は減少しているのに対して、「自動二輪の運転中」と「原付バイク乗車中」の死者数は増加しています。自動二輪や原付バイク(以下、合わせて「二輪車」といいます。)との衝突は重大な人身事故につながります。そのため、衝突そのものを防がなければなりません。
 二輪車との衝突を防ぐためには、ドライバーはいわゆる防衛運転(危険を予測し適切な対応を早めに取る)を率先して実践することが求められます。そのため、予測すべき二輪車の危険性や実際の交通の場での危険パターンを知っておくことが必要です。
 そこで今月は、二輪車の危険性や二輪車と四輪車の典型的な事故パターンと防止策についてまとめてみました。

一般的な二輪車の危険性
1: スピードや距離の判断を誤りやすい
二輪車は四輪車に比べて車体が小さいため、四輪のドライバーは二輪車のスピードを実際よりも遅く判断したり、二輪車との距離を遠く判断しがちです。そのため、右折時などに接近してくる対向二輪車を見て、自車のほうが先に行けると考えて右折し、二輪車と衝突するというケースがよくあります。
二輪車は予想以上に速い、間に合わないと考えて二輪車が接近しているときは通過を待ちます。
2: サイド(ドア)ミラーの死角に入りやすい
左側方を走行する二輪車の見え方は、四輪車との位置関係によって変化します(図1)。サイドミラーの死角に入ってまったく見えないことがあるほか、車体が小さいため、後方にある場合映っていても見落としやすいという危険性があります。
左折や進路変更するときは、左側方や後方に二輪車がいる、隠れているということを予測して、目視することを習慣づけます。
3: 急な進路変更をする
二輪車のなかでも原付バイクの場合は、道路の左端を走行することが多いのですが、道路の左端には駐車車両などさまざまな障害物があります。そのため進路を塞がれてしまい、合図も出さずに急に進路変更をするということがよくあります。さらに、バランスをとって走行する二輪車は、路面の状況に左右されることが多いものです。そのため、ライダーは常に直前の路面が気になって視線が下を向きがちになり、周囲の状況に対する注意が欠けてしまうことがあります。
前方左端をバイクが走行しているときは、さらにその前方にまで目を向け、バイクの進路変更がある、こちらを見ていないと予測し、距離をとるようにします。
4: 急ブレーキをかけると転倒する
二輪車は四輪車と違い、急ブレーキを踏むとバランスを崩し転倒するおそれがあります。二輪車が転倒しライダーが路上に放り出されると重大な事故につながります。
走行中、周囲に二輪車がいる時は、急に転倒することがあると予測し、車間をあける、進路変更などはしない等の対応をします。
5: わずかな車間にも進入してくる
大型二輪車以外の二輪車は、約1メートルの間隔があれば通行できるといわれています。そのため、ちょっとのすき間を見つけ進入してくることがあります。特に渋滞時には、自動車の間を縫うように運転をする二輪車も多くみられます。
渋滞時には、ミラーなどで後方に気を配り二輪車がいないかどうかをよく確認します。安易な進路変更は危険です。
 
実際の交通の場での危険パターン
1:右折時の衝突

2:左折時の巻き込み

 交差点での右折四輪車と直進二輪車が衝突する事故パターンです。この事故の大半は、ドライバーが二輪車の速度を実際よりも遅く判断したり、二輪車との距離を実際よりも遠くに判断したりして、強引に右折するために起こっています。(図2)
 原付バイクの場合、法定最高速度は時速30キロですが、交差点に接近している場合は、早く交差点を通過しようとして速度を上げるケースが多く、予想以上にスピードが出ています。したがって、二輪車の速度を遅いと判断するのは非常に危険です。二輪車が接近しているときは、無理をせず、その通過を待ってから右折することが、二輪車との衝突を防止する最も確実な方法です。

 左折時に左側を走行してくる二輪車と側面衝突する事故パターンです。これはドライバーが左側方の二輪車を確認しなかったか、あるいはミラーの死角に入っていて見えなかったために起こるケースが多いといえます。
(図3)
 したがって、早めに左折の合図を出すとともに、左側方や後方に二輪車がいないかどうかをサイドミラーだけでなく自分の目で確認し、(雨の日はサイドミラーが水滴のために大変見にくく、二輪車を見落としやすいので、特に注意)二輪車がいる場合は二輪車を先に行かせてから左側に寄って、いつでも停止できるくらいの速度で左折します。

3:進路変更した二輪車との衝突

4:サンキュー事故

 道路の左端を走行していた二輪車が駐車車両を避けるために右側に進路変更して衝突するという事故パターンで、後方を確認せずに進路変更する二輪車にも大きな責任がありますが、二輪車の進路変更を予測できなかったドライバーにも問題があります。(図4)
 前方左端を二輪車が走行しているときは、さらにその前方にまで目を向けるようにします。そうすれば駐車車両などの障害物により、二輪車が進路変更するかどうかの予測がつきます。進路変更が予測されるときは二輪車の動きに注意するとともに、車間距離を十分にとって接近しないようにする必要があります。
 対向車に道を譲られて右折するとき、対向車の向こう側から直進してきた二輪車と衝突するという事故パターンで、道を譲ってくれた対向車に「サンキュー」と言って右折することから、「サンキュー事故」といわれています。(図5)
 道を譲られると、早く右折しないと譲ってくれた対向車に悪いと考えて一気に右折していくケースが多いのですが、これが事故に結びつきます。対向車が道を譲ってくれたといっても、安全まで保証してくれたわけではありません。この場合、譲ってくれた車の陰から「二輪車が出てくる」と考えて徐行して進み、二輪車がいないかどうかを確認してから右折するようにします。