安全運転のポイント

月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成16年5月


 昨年の交通事故による死者(7,702人)を状態別にみると、もっとも多いのは「自動車乗車中(3,028人)」でしたが、次いで「歩行中(2,332人)」となり、この2つで死者の約7割を占めています。自動車乗車中の死者は、前年よりも410人の大幅な減少が見られた一方で、歩行中の死者は52人の減少にとどまり、今後はさらに歩行中の事故防止対策が重要になってくると考えられます。ところで、歩行中の死者の年齢層別内訳をみると、もっとも多いのが65歳以上の高齢者(1,487人)で、約6割を占めています。今後も高齢化社会がますます進展するなかで、ドライバーとしては高齢者を保護する運転を今以上に心がけていく必要があります。そこで、高齢歩行者との事故で多く見られるパターンや運転上の注意点をまとめてみましたので参考にしてください。

高齢者の特徴
 高齢者との事故を防ぐためには、まずドライバーが高齢者の以下のような特徴を理解しておくことが大切です。
1. 「相手が止まってくれる」などと、周囲の状況を読んで判断するのではなく、自分の思ったように行動しがちになります。
2. 視力・聴力の衰えから、車の速度を判断しにくくなり、また間近のエンジン音が聞き取れず、車の発見が遅れることがあります。
3. 体力・運動能力の衰えから、歩行速度が遅くなり、車に対して機敏な動きがとれなくなります。
4. 交通ルールに弱くなり、ルールを無視した行動をとりがちになります。
高齢歩行者の事故パターン
1. 渋滞車両の間から横断してくる
 片側車線が渋滞のため停止している道路で、「反対車線の車も来ない」と高齢者が思い込み、渋滞車列の間から道路を横断しはじめ、進行してきた車と衝突する事故パターンです。自車線が空いているからと漫然と運転していると、高齢者の横断を見落としがちになります。
2. 幹線道路横断のため、急に道路を横断する
 片側2車線で交通量も多く、中央分離帯がある幹線道路で高齢歩行者が横断し、車と衝突する事故パターンです。交通量が多い幹線道路では歩行者の横断はないとドライバーは思い込みがちです。ところが、「最短距離で道路を横断したい」と思っている高齢者は急に道路横断を始めることがあります。「歩道にいる高齢者は横断しないだろう」と、油断するのは危険です。
3. 車の接近に気づかない
 狭い生活道路などで、高齢歩行者が下を向いて歩いているため、車の接近に気づかず衝突する事故パターンです。ドライバーは、「高齢歩行者がこちらに気づいて避けるだろう」と考えがちですが、車の接近に高齢歩行者が気づいていないことがあり、ブレーキをかけても間に合わず事故となってしまいます。高齢歩行者のそばでは、「車の接近に気づいていないかもしれない」と考え、慎重な運転が必要です。
4. 信号を無視して横断してくる
 「前にいる自転車が横断していたので、自分も横断できると思った」などと、高齢者が赤信号でも横断を始め、青信号で進行してきた車と衝突する事故パターンです。ドライバーは、自車線が青信号の交差点を通過するとき、赤信号を無視して横断を始める歩行者がいるとは思いも寄らないことから事故が起きています。また、警音器を鳴らしても高齢者は気がつかないことがあることから、「警音器を鳴らせば横断をやめるだろう」と安易に考えるのは禁物です。



高齢歩行者の事故防止 ここがポイント
 高齢者を事故から守るには、高齢者を見かけたドライバーの皆さんの配慮や思いやりが不可欠です。以下のような点に注意して、高齢者事故を防止しましょう。
1. 急な道路横断に備えておく
 「車の流れも多いし、まさか横断はしないだろう」と思うような場所でも、高齢歩行者が急に道路に飛び出すことがあります。高齢歩行者を見かけたら、車の前を急に横断してくるかもしれないと考え、速度を落として接近します。
2. 「赤信号でも横断するかもしれない」と予測する
 高齢歩行者は、赤信号でも関係なく横断をはじめ、そこで事故に遭うことがあります。ドライバーは「赤信号で横断してくるはずがない」と考えがちですが、信号に気づかずに横断してくる高齢歩行者がいることも考えておきます。
3. 「車を確認していないかもしれない」と考える
 高齢者がこちらを見て車を確認したと思っていても、車の速度を見誤っていたり、視力の低下により確認できていないことがあります。高齢者を見かけたら「車に気づいていないかもしれない」と考え、慎重に接近します。
4. 歩道から車道に出ることがある
 手押し車を使用する高齢者は、障害物が多く歩きにくい歩道を嫌い、車道に降りて歩くことがあります。また、高齢者は足下に注意していることから、車の接近を見落としていることがあるため、ドライバー側が側方間隔を十分にとるなど、高齢者に配慮して走行します。
道路交通法でも高齢者の保護は義務づけられています
 高齢者の事故防止については、道路交通法で以下のように定められています。高齢者を事故から守るためにもぜひ実践してください。
 〔高齢歩行者の保護〕
 高齢歩行者が道路を横断しようとしている場合などで、本人から申し出があったり、必要があると認められる場合、その場に居合わせた人は高齢歩行者が安全に道路を横断できるように協力します(道路交通法第14条第5項)。
 運転者は、通行に支障のある高齢歩行者が通行しているときには、一時停止や徐行をして、通行を妨げないようにします(道路交通法第71条第2号の2 )。