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「急ぎの気持ちがあった」→「やってはいけない運転行動をした」→「衝突」のように多くの事故の背後要因として「急ぎの心理」があります。例えば、「急ぎ・あせりがあり、つい一時停止を怠って、出会い頭衝突になった」「車間距離が詰まり、追突してしまった」などです。 今回は、事故の背後要因としての、この「急ぎの心理」についてまとめてみました。 |
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人はなぜ、急ぎの心理になるのでしょうか。 人間にはもともと、「他人よりも先に行きたい」という本能的欲求があります。さらに、車の運転に関しては、アクセルを踏むだけでどこへでも走ってくれるというたいへん便利で快適な環境におかれるため、その本能的な欲求が現れやすくなるといえます。 人間の本能的な「急ぎの心理」に関して、九州大学の松永教授は次のように解説されています。「人(他の動物も)が最も優先する行動は、生命保存のための行動です。生命保存のための行動で最も重要なものは、食料獲得の行動です。食料を獲得するためには、食料がなくならないうちに食料のあるところに到着している必要があります。すなわち他人よりも先行することが必要なのです。このような食料獲得という生存競争を我々の祖先は長い間繰り返してきたに違いありません。したがって、この先急ぎの行動メカニズムは遺伝的に我々に与えられていると考えられます。」(日本交通心理学会編「人と車の心理学Q &A100 」) 私たちが道を歩いていて他の人に追い越されるだけでも不快に感じることがあるように、このような、先急ぎの本能は日常のいろいろな場面で実感するところです。 しかし、このような先を急ぐ本能が私たちの中に潜在的にあるからといって、常にやみくもに急いでいるわけではありません。ふだんは、この急ぎの心理をなんとか押さえて生活しています。ところが上記のように、車の運転という便利で快適な環境におかれると、わずかなきっかけで、この本能的な急ぎの心理が顔を出してくるのです。 |
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どのようなときに、ドライバーは「急ぎの心理」になるのでしょうか。 急ぎの心理になるケースを大きく分けると、@最初から急いでいたケース、A当初の予定が狂って途中から急ぐケース、B運転中突発的に「急ぎの心理」になるケース、Cその他、になります。 @の最初から急いでいたケースは、自分の仕事の段取りに関するもの、得意先や友人、家族などが関与するものです。例えば、「準備に手間取り出発が遅れた」「業務が多忙」「約束の時間に間に合わせる」などです。Aの当初の予定が狂って途中から急ぐケースは、自分のミスに関係するもの、交通状況など外的な理由によるもの、社内や得意先の都合によるものなどです。例えば、「道に迷う」「忘れ物をした」「渋滞に巻き込まれた」「会社から予定外の仕事の連絡が入った」などです。いずれも、時間の余裕がなく、それを取り戻そうとするための「急ぎの心理」です。 これに対し、Bの運転中突発的に「急ぎの心理」になるケースとCのその他は、時間的な制約はなく、急ぐ必要性がないときでも運転中何かのきっかけで突発的に「急ぎの心理」になるものです。皆さんは、このようなご経験はありませんか。 |
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表 運転中に突発的に急ぎの心理になるきっかけの例
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急ぎの運転は一般には、信号無視や一時停止の無視、安全不確認などの「ルール違反」の運転をしがちになるほか、運転操作に関しては、無理な追越し、車間距離を詰めて走る、車線を頻繁に変更する、クラクションを鳴らすなど、ふだんよりも荒っぽく、危険な行動をとる傾向があります。全般にスピードが出ているので、これらの運転は大きな事故につながりやすいことはいうまでもありません。運転中の急ぎの心理に対処するため、以下のことを励行しましょう。 | |||||||||||||||||
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