安全運転のポイント

12月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成15年12月


 追突は全交通事故の約30%を占める、一番多い事故です。また追突事故は人身事故に結びつきます。平成14年も、自動車乗車中の軽傷者の55%は追突事故によるものです。
 前を見て運転しているはずの人が何故こんなに多く事故を起こすのでしょうか。そこには一体なにが起きているのでしょうか。追突事故を減らすことは、負傷者を減らすと言う重要な意味を持っています。この観点から、(財)交通事故総合分析センターでは追突側の運転者の心理的側面を分析し、「交通事故はどうして起きるのか」(追突152件の分析結果)として興味深い結果を発表しています(イタルダ・インフォメーション43 2003年6 月)。今回はその内容を見ながら追突事故防止を考えてみましょう。

追突の約60%が単路で発生、交差点や交差点付近は約40%
 平成14年に発生した追突事故を発生場所でみると、図1のとおり、追突事故全体の約60%が単路で発生し、そのほとんどは信号のない場所で発生しています。交差点や交差点付近では約40%です。信号のない、一見交通の流れがスムースで追突の危険も比較的少ないと思われる単路の方が、交差点及び交差点付近よりも多く発生しています。
 
相手を見ないまま追突している
 まず、追突事故の原因(直接エラー)をみるとほとんどが事故直前の先行車そのものなどの「見落とし(認知エラー)」です。図2のとおり、運転者は先行車のほか、駐停止・事故車両、他車の合図などを、一部暗い場所での駐車車両など、「見ようと思っても見えなかった」ものもありますが、ほとんどは「見れば見えたのに、見なかった」ために見落としています。
 図3は「見なかった」理由を示しています。つまり追突は運転者が他の物への注意や、脇見をしたため、先行車を見ないまま起こしているのです。また、見なかった理由の中で、眠気、飲酒、急病が1/4あるのも留意すべきです。
 
運転者の油断を誘うものは
 以上のように、前を見ていないことが、追突の直接の原因であることがわかりました。では何故、こうも簡単に前方から目(注意)をそらすのでしょうか。運転者の油断を誘うもの(背景エラー)があるのではないでしょうか。これを探ったのが図4です。追突する少し前(平常時)に、運転者が先行車を見てどんな判断・予測をしたかを整理したものです。運転者は「先行車は減速しない」「右左折しない」「車間距離は妥当」あるいは、信号、渋滞などで停止中の先行車については、「もっと遠くにいる」「すぐ に発進する」などの判断・予測をしています。しかし結果的に事故になっているのですからこのような平常時の判断・予測は、正確なものでなく「…するはずだ」という自分に都合の良い期待・願望に近いものと言えます。この期待・願望をもってしまうことが油断を誘い、脇見などを助長する真の要因と言えます。
 
単路でなぜ多いか
 追突は先に見たように信号のない単路で多く発生しています。交通が錯綜する交差点およびその付近とは違い、一見単調に見える単路走行では、後続の運転者は先行車が減速・停止することはまずないだろうという判断・予測のもとに、何らかの余裕・油断を持って運転していることが考えられます。つまり、前記の期待・願望がより強く現れやすい場所と言えます。ところが、現実には単路であっても、中央分離帯の切り下げ(U ターンなどのために中央分離帯を解放してある部分)や道路沿いの駐車場、ファミリーレストランなど「目立たない分岐点」が存在し、そこで右左折するために減速・停止する車は少なくないものです。また駐車車両、工事、事故、渋滞など交通の流れを乱す場合もあります。図5 のとおり、それらの場所での事故は152件中の76件と半数を占めています。単路であっても交通の流れを乱す存在があり、そこで多く追突事故が発生しているのです。以上をまとめた図が、図6 です。
 
追突事故を起こさないためには
 以上の分析から、従来から言われている、「脇見をしない」「車間距離を十分とる」という追突防止の対策の重要性がこの分析ではっきりしたのではないでしょうか。
 「イタルダ・インフォメーション43」では、追突しないためのポイントを以下のとおり掲げています。
1. さしあたり危険がないような状況のときこそ、(油断をさそう期待・願望が起きるがそれは危険であり) 脇見をしたり、運転以外のことを考えたりしないようにしましょう。
2. 先行車の制動灯が故障していたり、方向指示器の合図がない等の(見ようとしても見えなかった)不測 の事態がおきても、慌てずに、余裕をもって認知→判断・予測→操作・行動が行えるだけの車間距離と速 度の選定をしましょう。
3. ブレーキやウインカーなどのタイミングが自分とは異なる人もいることを理解しましょう。
 
追突されないためには
 また追突されないポイントは以下のとおりとしています。
1. 予告ブレーキや早めのウインカーを心がけましょう。
2. 渋滞末尾で停止するときはハザードランプを点灯しましょう。
 なお「イタルダ・インフォメーション43」では、中央分離帯切り下げ箇所の解消、黄信号を制御するジ レンマ感応制御式信号の導入・促進、追突警報装置の普及などの道路環境、仕組みの整備の提言も行っています。