安全運転のポイント

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 最近、昼間でも前照灯(ヘッドライト)を点灯して走行している車を多く見かけるようになりました。これは、「昼間点灯(DRL=Daytime Running Lights)」といわれ、車の視認性を高めることによる事故防止効果を狙い、一部の県などで試行されているほか、運送会社、バス会社、タクシー会社などの間にも徐々に広がりを見せているものです。そこで、今月は車の「昼間点灯」についてご紹介します。
昼間点灯・・・現在の状況
   「昼間点灯」は、北欧各国やカナダなどでは、義務化ないし推奨され、すでに広く実施されています。
 日本でも、二輪車は1998年の秋以降に製造された車両に常時点灯装置が取り付けられ、エンジンをかけると自動的に前照灯が点灯する仕組みとなり「昼間点灯」が全面的に実施されています。
 四輪車では従来から薄暮時の早目点灯運動が推奨・実施されていますが、以下のように本格的に一層の事故防止を狙い、「昼間点灯」に取り組む動きが高まっています。
 地域的な取組みとして、四輪車の昼間点灯を以前から啓蒙していた長野県警察本部では、今年3月から県内で四輪車の「昼間点灯モデル事業所」を募集し、「昼間点灯運動」を実施しています(モデル事業者数269事業者 車両総台数約15,000台)。
   北海道庁と北海道警察本部でも7月1日から全道を対象として昼間点灯運動を開始しています。
 滋賀県と滋賀県警察本部では、さる6月の1ヶ月間、「前照灯昼間点灯運動(予備試験)」を行いました。その結果「交通事故に直結するものや、他の交通の障害となるなどの重大な問題点が認められなかった」として、9月から「本格試験」を実施しています。
 一方個別の事業者でも、昼間点灯は事故防止効果があるとして積極的に実施した大手運送会社をはじめ、バス、タクシー、さらには一般企業への広がりを見せて、昼間点灯を行う車両が増えています。
 
欧米における昼間点灯
   オランダ、ハンガリーおよびアメリカで行われた科学的研究では、昼間点灯は視認性が高まり重傷・死亡事故の防止に効果がある、欠点としては、燃料消費量や電球交換が増えるの2点があるが比較的低コストである、としています。すでに、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、カナダ、イスラエル、ハンガリー(市街地外でのみ)、ポーランド(冬季)、スロヴェニア(冬季)では昼間点灯が義務づけられています。アメリカではレンタカーや新車の一部に自動的に前照灯が点灯する車両があります。スイスでは2002年1月1日に昼間点灯の法律が施行されています(PRI<国際交通安全協会>発行 「PRIニュース2001年12月」より)。
昼間点灯を実施した場合の効果、問題点、注意点など
   効果としては、長野県警察本部で行ったアンケート結果では「効果があった」、「効果がありそう」との回答が約7割、「経費変化なし」、「経費が減った」が合わせて約7割、具体的効果として「事故の減少(35人)」「運転者のマナーアップ(70人)」「営業上のプラス(40人)」などとなっていたことから「昼間点灯は経費がかからず、かつ有効な安全対策と認められる」としています。
(図参照)。
 
 また、なぜ事故防止に効果があるかについては、昼間点灯を決めたある運送事業者は、「視認性の向上以外にも、昼間点灯していると歩行者に見られているという意識がドライバーに働き、運転マナーの向上や、安全運転の自覚につながる」と考えられるとしています。
 一方実施した場合の問題点、注意点としては、実施例からいくつかピックアップすると、「昼間点灯のステッカーを貼布しアピールしていても、対向車が“ライトの消し忘れ”と思いパッシングしてくる」「右折時に対向車がパッシングしたので右折しようとしたところ、実際にはライトの消し忘れを知らせるためのパッシングだった」「自車の昼間点灯を対向車が道を譲ってくれる合図と勘違いした」「消し忘れによるバッテリー上がりがあった」などがあります。
 なおこれらとは別に、車の昼間点灯について全面的に普及した場合、人と車の混合交通の中で、二輪車、自転車、歩行者の動きが目立たなくなるかもしれないという意見もあります。
 「昼間点灯」については、交通全体の安全という面から見る必要もありそうであり、今後の動向が注目されるところです。