安全運転のポイント

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 自転車は買い物や通勤・通学などに多く使われている、手軽で便利な乗り物です。しかしその運転を安易に考えてはいないでしょうか。自転車事故で多くの利用者が被害者として負傷している一方、加害者として責任を問われている事故も決して少なくありません。自転車事故がどのように起きているか、その実態を見て留意点を考えてみましょう。また、自転車事故の原因として利用者の交通ルールの無知や無視が指摘されています。道路交通法上の「車両」として、守るべきルールについてもまとめてみました。
自転車事故全体の状況
 「交通統計」(平成13年版)
   まずどのくらい自転車事故(自転車が一方の事故当事者となった事故)で死傷者がでているかをみてみましょう。自転車乗用中の死者数は992人で全死者数(8747人)の11.3%を占め、負傷者は176,819人で全負傷者数(1,180,955人)の15.0%を占めています。(ちなみに自動車乗用中62%、二輪乗用中16%、歩行中7%)、この負傷者数は10年前と比べ4割以上も大幅に増加しています。
 また、人口10万人当たりでみると負傷者の年令は19才までの若年層が半数以上、死者は65才以上の高齢者が大半を占めています。自転車事故には若年者が多く係わっていると同時に、高齢者は自転車事故に遭遇すると死亡事故に結びついてしまう確率が高いといえます。
どんな自転車事故が多いのか?
   自転車が第1当事者の事故も起きています。総件数は24,845件(全交通事故の2.6%)です。事故類型として見ると、「自転車対車両」が19,655件(全体の約80%)、「自転車単独」が3,496件(14%)、「自転車対人」が1,681件(6.7%)の順となっています。「自転車対車両」では、「出会い頭衝突」が13,741件(70%)と圧倒的に多く、次いで「横断時衝突(1,082件)」、「正面衝突(942件)」が、それぞれ約5%を占めています。自転車を利用する場合は、交差点での出会い頭事故に特に注意が必要です。
   
    
どんな行動・原因による事故が多いのか?
   さらに第1当事者の事故を見ると事故の殆どが「直進中」「横断」「右折」のいずれかの行動中に起きており、そして事故原因としては、「安全不確認」が6,366件(25.6%)、「一時不停止」が5,443件(22%)、「信号無視」が2,917件(11.7%)が挙げられます。自動車が第1当事者の事故に比べ重大な違反といえる「一時不停止」「信号無視」の割合が大きいのが特徴といえます。
事故事例で見る自転車事故
   自転車事故で自転車が被害者側であっても、ケースによっては交通ルール違反を重く見られ、過失相殺される、また加害者側として高額な賠償金を支払うこともあります。(下記判決例参照)。
 自転車を運転する場合、まず交通ルールを守り、交通マナーを身に付けるということが、自分の身を守り、被害を与えないことになるということを認識するのが何よりも重要です。
こんな運転は、ルール違反です
   自転車は、道路交通法上のれっきとした「車両」です。自転車に乗ることは「運転」であり自動車と同じくルールが定められています。この守るべきルール自体が知られていないことが問題です。自転車運転の問題点と対比して主要なルールを再認識しましょう。
問題点: 右側通行している、歩道を当然のように通行している
自転車は、歩道(路側帯)と車道の区別のある道路では、(道路工事などの場合を除き)車道の左側部分を通行しなければならない。
自転車は、歩行者の通行に著しく妨げになる場合を除き、路側帯を通ることができる。ただし、白の二本線の標示のある路側帯は通れない。
歩道は「自転車歩道通行可」の標識がある場合のみ通行できる。その通行は、歩道の車道寄りの部分を徐行し、歩行者の通行を妨げるおそれのある場合は、一時停止する。
問題点: すばやく渡れるので信号を簡単に無視している。一時停止をしない。斜め横断している。交差点での右折方法がまもられていない。
自転車は自動車と同じく「車両」として、信号(特定されているときはその信号)、標識に従い通行しなければならない。
交差点では直角右折する。自転車横断帯があるときはその横断帯を通行しなければならない。
問題点: 飲酒、無灯火、傘さし、並進運転している。
いずれも禁止されており、罰則もある。
    
  自転車事故の判決例
事故の内容 裁判所の見解 過失割合
(賠償額)
歩道上(自転車通行可)で、甲(16歳・男性)が乗車する自転車のハンドルが歩行中の乙(61歳・女性)のショルダーバッグの肩ひもに引っかかり乙が転倒、大腿骨骨折の重傷を負った事故。

人が混でいる歩道で、自転車がやっと通れるような状態、甲は人と接触しケガさせることを予見できた。そのようなことが起きないように自転車の運転に注意を払い、場合によっては自転車を降りて手押しすべき注意義務があったが、それを怠った。
(平成8年7月29日 東京地裁判決)

自転車の過失
100%
賠償額
1,740万円
信号機のない見とおしの悪い交差点で時速30km/hで走行してきた甲運転の乗用車と一時停止規制の道路からでてきた乙乗用の自転車が出い頭で衝突。なお交差点の甲側道路角に見通しを妨げる駐車車両(丙)があった。乙は死亡 甲は右方の乙側道路の安全不確認、丙は、見通し妨害の過失がある。乙は一時停止標識が設けられ、一時停止の規制がされているにもかかわらず、一時停止及び左方の甲側道路の安全確認を怠った。
(平成9年1月29日 東京地裁判決)
自転車の過失
40%
乙(23才)が乗車する自転車が道路右側を通行中、駐車車両を避けて道路中央付近に出たところ、折から交差点を左折してきた甲運転の原付自転車と衝突した事故。乙は後遺障害を残した。 乙は通行が可能な歩道があるにもかかわらず車道の左側を逆走し自分の進路の安全確認を怠り、駐車車両の陰から飛び出すように進行した過失がある。
(平成13年1月31日 東京高裁判決)
自転車の過失
50%
片側2車線道路の交差点の横断歩道を兄の自転車に続いて自転車で横断中の甲(8才)が折から直進してきた(制限速度を25km/h超過)乙運転の普通貨物車と衝突した事故。甲は頭部外傷の重傷、後遺障害を残した。 甲の信号無視での横断により事故となった。乙にも制限速度超過と前方不注意の過失がある。
(平成13年4月20日 名古屋地裁判決)
自転車の過失
50%
甲の認定損害額
4,887万円