安全運転のポイント

 車を運転するという行動は、認知(情報をとる)−判断(考える・決断する)−操作(行動を起こす)という過程の繰り返しであるとされています。いずれの過程も安全運転にとって大事ですが、交通状況をとらえること、すなわち「見ること(認知)」がしっかり行われていることが何よりも重要です。しかし、交通事故は見ることのミス(いわゆる脇見運転、漫然運転など)が大半を占めている現状にあります。そこで、今月は「見るということ」について考えてみました。

目で見たものがすべて情報とはならない
 運転する場合、私たちはまず、外的状況(道路の形状・幅員・前方の状況など)を知覚することから始めます。これは、ほとんど目から得られる(網膜に写る)視覚情報の摂取という形をとります。しかし、外的状況のすべてが情報として私たちに採り入れられるわけではありません。そこで常に選択という原理が働き、多くの刺激の中から本人が必要な情報として選んでいるものが採り入れられます。
 どの刺激を選択するかは、対象の特色(大きさ、色、動きなど)により決められますが、同時に本人の興味や関心、欲求、期待などの心理的な状態によって、その見え方(情報)が違ったり、気がつかないことがあるというのが、見るということでの怖さであり、留意しなければならない点です。たとえば、一つの絵を見て、何に見えるかという心理テスト(図参照)によってもこのことがわかります。
「見る」と「視る」
 ところで、「みる」は普通「見る」と書きますが、この言葉は多様な意味を持ち、視(気をつけてみる)、看(目を凝らしてみる)、観(望みみる)などでも表すことができます。「心ここに在らざれば視れども見えず…」との諺が示すように「みる」には「見える」と「見(視)ようとする」の2つの意味があります。「見える」は目に写っているものをみるだけの単にみているというだけの消極的な働きであるのに対し、「見(視)ようとする」は消極的な意図をもってみよう、理解しようとみる働きであるとの違いがあります。車の運転での「見る」は、当然、後者の方で、このように「視る」ことによりはじめて見るべき対象に注意が向き、しっかり捉えられたり、危険となりそうな事物が発見できるようになるのです。前者では、即事故につながることになります。


 

運転では「積極的に視る」ことが大切
 以上のことから「見る」ということをまとめると、
知覚には選択の原理が働く
生理的に見えているもの(網膜に写っているもの)すべてが気づかれているわけではなく、気づかれない、あるいは無視されている部分がある
時には違った見え方をする可能性がある
見るということは積極的なことであり、現在見えていないものまでも探してみようとする態度を身につけることが必要
ということがわかります。いま、危険感受性あるいは危険予測能力を高めることが事故防止の最大のキーとして強調されています。このためには運転での「見る」を積極的に「視る」と理解し、励行することが何よりも大切なのです。
 
「見る」の重要性
 「自動車の運転で一番大切なことは正しく見ることだ」「“よく観る”ことが安全運転の基本中の基本だと考えている」「車の周囲をさーっと見回すだけでは適切な注視(正確な知覚)はできない」「運転の基本は周りをよく見ることだ」など、安全運転を指導する専門家・識者の提言が数多くなされています。それだけいかに「見る」ことは重要であるかを表しています。あらためて肝に銘じて安全運転に活かしましょう。


 

 

 

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