安全運転のポイント

5月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成12年5月


 私たちが車を運転する際、走行中の車には、「摩擦力」「慣性力」「衝撃力」「遠心力」という4つの自然の力が働いています。これらの力の作用を無視した運転は、車のコントロールが困難となり大変危険なのです。安全のためには、車に働く4つの力の作用を理解し、それが運転に与える影響を念頭において運転することが大切です。そこで、今回は、車に働く自然の力についてまとめてみました。


車を動かす・停めるには「摩擦」が関係する
 2つの物が接触して互いに動こうとする(運動する)とき、接触面では運動を阻止しようとする力が働きます。これが「摩擦力」です。車が発進するときや停止するときには、摩擦の力が大きく関係し、摩擦力がなければ、動き出すことも停止することもできません。つまり、車はエンジンから車輪に伝えられる車輪の駆動力(回転力)とタイヤと路面の接触部の摩擦力との反作用により動き出します。そして、いったん動き出した車は他からの摩擦などの力を加えない限り動き続けます。これは慣性の法則による慣性力が働くからです。
 一方、車を停めるのは、ブレーキを踏んで車輪の回転速度を落とすことにより、タイヤと路面の接触部に生じる、車を後ろ向きに引っ張る摩擦力を利用します。これが制動力となり最終的に慣性力を打ち消して止まります。このように走っている車はブレーキを踏むとすぐ止まるのではなく、ブレーキをかけてから停止するまでの距離(制動距離)が必要で、この制動距離は速度の2乗に比例し長くなります。

摩擦の力は路面によって異なる
 タイヤと路面との接触部の摩擦力は路面の種類(アスファルトなどの舗装の種類)や状態(乾燥、湿潤などの状態)により異なり(摩擦係数が小さい程、摩擦力は小さい。(下表参照))また、タイヤの状態(空気圧や摩耗の程度)も関係します。
 このように車と摩擦の関係を見ると、たとえば、積雪路や氷結路では摩擦係数が極端に小さいため発進自体も困難であり、このような路面ではブレーキによる制動が効かず滑ってしまうことが理解できます。
 車の速度を出すのは容易ですが制動距離や路面の状況を考えた適切なコントロールが安全運転に必須です。

衝撃力は、速度の2乗に比例し大きくなる
 物体同志が衝突した場合「衝撃力」が発生します。衝撃力は、車の速さと重さに応じて大きくなり、また固い物に衝突したときのように、衝撃の作用が短時間に行われるほど衝撃力は大きくなります。たとえば、時速60キロメートルでコンクリートの壁に衝突した場合、約14メートルの高さ(ビルの5階)から落ちた場合と同じ衝撃力を受けます。衝撃力は、速度の2乗に比例して大きくなるため、速度が2倍になれば衝撃力は4倍、速度が3倍になれば9倍に大きくなります。このように速度が出ているほど、衝突時の被害が大きくなるため、最悪の状態を考えると、速度を控えめにコントロールすることが必要です。
カーブでは遠心力が働く
 カーブや曲がり角を回ろうとするときには、自動車の重心に遠心力が働き、車は外側に滑り出そうとします。このため荷物の積み方が悪く重心の位置が高くなったり、片寄っていると車が倒れやすくなります。遠心力は、速度の2乗に比例して大きくなり、カーブの半径が小さくなるほど大きくなります。すなわち、同じカーブであっても速度が2倍になれば遠心力は4倍に大きくなります。そして、遠心力がタイヤと路面との摩擦力より大きくなると、車はカーブの外へ飛び出し、大変危険です。このためカーブの手前では速度を十分に落としておく必要があります。

速度の影響(まとめ)
 車に働く自然の力の大きさを左右する最大の要因は、何といっても車の速度です。慣性力、衝撃力、遠心力は「速度の2乗に比例して大きくなる」という共通の特性を持っています。このことは速度を増せば増すほど、車の横滑り、転倒や、制動距離の延びによる衝突などの危険性が高くなること、また衝突後の被害の程度が甚大になることを意味します。
 逆にこのことは速度を半分に落とせば、危険性は4分の1に減少することになるわけです。つまり自然の力の特性を知れば、「速度を控えめに」「要所で速度を落とす」などの、要は速度のコントロールがいかに事故防止に直結しているかが理解できるのではないでしょうか。

 

 

安全運転知識ワンポイントテスト

次の1.〜3.の問いについて、正しいものには○、誤りには×をつけて下さい。
1. 駆動力が、タイヤと路面との摩擦力より大きくなると、タイヤが空転し、発進できなくなる。
2. 乗用車が時速50キロから時速100キロに速度を上げたとき、衝撃力は2倍に大きくなる。

3.

速度が同じ場合、カーブの半径が大きくなるほど遠心力は大きくなる。
答えはここをクリック