安全運転のポイント

9月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成19年9月


 夜間は死亡事故が発生しやすいといわれています。実際、平成18年における昼夜別の交通事故発生状況をみると、交通事故(人身事故)全体では昼間のほうが圧倒的に多いのですが、死亡事故件数をみると夜間のほうが多くなっています。また、交通事故(人身事故)1,000件当たりの死亡事故件数をみると、昼間の約4.7件に対して夜間は約12.7件と約3倍も夜間のほうが多く、夜間の事故は昼間に比べて死亡事故につながりやすいことを示しています。
  夜間に死亡事故が発生しやすい要因としては、夜間は昼間に比べて交通量が少ないためにスピードを出しやすいうえに、暗いために危険の発見が遅れることがあげられます。特に歩行者や無灯火の自転車は発見が遅れやすいため、気づいたときには間に合わず死亡事故などの重大な事故につながりやすいのです。したがって、視界を確保し危険を早めに発見することが夜間事故防止の重要なポイントのひとつとなります。
  そこで今回は、夜間の視界確保に不可欠なヘッドライトの使い方を中心に、夜間の事故防止について考えてみましょう。
 
ヘッドライトの照射範囲
 ヘッドライトの照射範囲については、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の第198条において次のように定められています。
走行用前照灯(上向きヘッドライト)は、そのすべてを照射したときに、夜間にその前方100メートルの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること。
すれ違い用前照灯(下向きヘッドライト)は、そのすべてを照射したときに、夜間にその前方40メートルの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること。
 したがって、ヘッドライトの照射範囲は、上向きで前方100メートル、下向きで前方40メートルとなりますから(図1)、できるだけ遠くまで視界を確保するという点では、ヘッドライトを上向きにするのが望ましいといえます。
他車との行き違い時などではヘッドライトは下向きに
 では、どのような場合でもヘッドライトは上向きにすればよいかといえば、そうではありません。対向車のいる道路でヘッドライトを上向きにすると、対向車のドライバーがヘッドライトに眩惑されて危険な事態を招くおそれがあります。また、先行車の直後を走行するときにヘッドライトを上向きにしていると、先行車のドライバーがルームミラーに反射したヘッドライトの光に眩惑される危険もあります。そのため道路交通法第52条第2項において、他の車と行き違うときや他の車の直後を走行するときは、ヘッドライトを減光するか、下向きに切り替えなければならないことが定められています。
 したがって、先行車も対向車も少ない郊外の道路や高速道路などでは、できる限りヘッドライトを上向きにして走行し、交通量の多い市街地などの道路では下向きにして走行するようにします。
ヘッドライトの照射範囲で停止できる速度で走行
 図2は、ヘッドライトの照射範囲と車の停止距離(ドライバーが危険を発見してからブレーキを踏み、車が停止するまでに要する距離)を示したものです。例えば、時速60キロで走行している場合の車の停止距離は約44メートルですが、ヘッドライトを下向きにして走行している場合にはヘッドライトの照射距離は40メートルですから、ヘッドライトで前方に危険を発見してからブレーキをかけても間に合いません。
 また、高速道路において時速100キロで走行している場合の停止距離は約112メートルですが、上向きのヘッドライトの照射範囲は100メートルですから、万一、前方に事故や故障等で停止している車がある場合、ヘッドライトで発見してからブレーキを踏んでも間に合わないことになります。したがって、夜間はヘッドライトの照射範囲内で停止できる速度で走行することが大切です。
右折時等はヘッドライトの照らさない部分に注意
 ヘッドライトは常に進行方向を照らし出すというわけではありません。特に交差点の右折時は、図3に示してあるように、横断歩道の右側部分はヘッドライトが照らしません。
 また、カーブでもヘッドライトが照らさない部分がありますから、そうした死角の部分に歩行者や自転車がいないかどうかをしっかり確認する必要があります。
歩行者が消える「蒸発現象」に注意
 自車と対向車の双方のヘッドライトで、センターライン付近にいる歩行者などが見えなくなってしまうことがあります。これを一般に「蒸発現象」と呼んでいますが、センターライン付近に何か動くものをみかけた場合は、歩行者かもしれないと考えて十分に注意する必要があります。
見通しの悪い交差点ではヘッドライトの切替えや点滅を
 見通しの悪い交差点では、手前で十分速度を落とすとともに、ヘッドライトを上下に何回か切り替えたり点滅させます。それにより交差道路側の車や歩行者に自車の接近を知らせることができ、出会い頭事故を防止するうえで効果的です。
薄暮時は早めにヘッドライトの点灯を
 薄暮時は、周囲の暗さに目が十分に順応できず、視力が低下した状態になるといわれています。したがって、薄暮時は早めにヘッドライトを点灯し、視界を確保するとともに自車を目立たせて周囲の車や自転車、歩行者から見落とされないようにしましょう。