安全運転のポイント

9月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成18年9月


 交通事故は加害者にとっても被害者にとっても不幸な出来事です。したがって、事故を起こさないことはもちろんですが、事故に巻き込まれない(事故をもらわない)運転をすることも大切です。事故を回避し事故の当事者にならない運転を、一般に「防衛運転」と呼んでいます。
そこで今回は、防衛運転の基本の一つである「距離をとる」ということについて考えてみることにしましょう。
  交通事故とは、横転などの自損事故を除けば、相手(車や歩行者)との距離がゼロになることですから、事故を回避するためには、相手との距離をとるということが不可欠の条件となります。
この場合の「距離をとる」とは、前車との車間距離をとることだけを意味しているのではありません。側方間隔や後続車との距離など自車の周囲全体に対して距離をとることを意味しています。

前車との距離をとる
 前車との距離とは、いわゆる車間距離のことですが、これについては、車の停止距離がひとつの基準となります。停止距離とは、危険を発見してからブレーキを踏むまでの「空走距離」と、ブレーキを踏んでから実際に車が停止するまでの「制動距離」を合算した距離をいいます。図1は、空走時間を1秒とした場合の、乾いた舗装道路における乗用車の停止距離の目安を示したもので、時速40キロの場合は22メートル、時速60キロでは44メートルとなっています。この停止距離が安全な車間距離の基準となりますが、これらの数字を覚えるのは大変だという場合には、時速60キロ以下の場合は、およその目安として時速から15を引いた数(時速60キロであれば、60−15=45メートル)と覚えておくのもよいでしょう。
 
時間で車間距離をとる方法
 30メートルや40メートルといった距離を目測で正確に判断することは難しい、という場合には、車間距離を時間でとるという方法があります。これは前方の電柱などの目標物を前車が通過してから自車がそこを通過するまで秒数を計るというもので、一般に「車間時間」とか「車頭時間」と呼ばれています。
 時間の計り方は、時計をみるのではなく(時計をみると脇見運転となり大変危険です)、前車が目標物を通過したときに「ゼロイチ」、「ゼロニ」、「ゼロサン」と数えて計ります。それらがそれぞれ1秒程度になりますが、最低2〜3秒の車間時間間隔をとるのが安全だといわれています。
 なお、距離で取る場合も時間でとる場合も、路面が濡れていたり、タイヤがすり減っている場合などは停止距離が長くなりますから、通常よりももっと長い車間距離(およそ2倍が目安となります。)をとる必要があります。
 
側方間隔をとる
 道路交通法第18条第2項において、「歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない」と定められています。これはドライバーに対して、歩行者との間に安全な側方間隔をとらなければならないこと(安全な側方間隔がとれない場合には徐行すること)を義務づけたものですが、防衛運転の視点からいえば、歩行者だけでなく自転車に対しても安全な間隔をとる必要があることはいうまでもありません。
 では、安全な間隔とは、具体的にどれくらいの間隔をいうのでしょうか。道路交通法では特に明示はされていませんが、間隔が広ければ広いほど安全であることは確かです。しかし、道幅には一定の限度がありますから、大半の道路ではそれほど広い間隔はとれないのが現状でしょう。
 したがって、歩行者や自転車と対面している場合には、歩行者や自転車が多少ふらついても接触しないですむよう、最低1メートルの間隔をとる必要があるでしょう。また、歩行者や自転車の背面から接近する場合には、歩行者や自転車は自車の接近に気づいていないこともありますから、対面の場合よりも広い間隔をとり、最低でも1.5メートルは確保するのが望ましいでしょう(図2)。もちろん、対面の場合も背面の場合も、これが安全な間隔とはいえませんから、側方を通過するときには十分にスピードを落とし徐行して進行するようにします。
 
後続車との距離をとる
 後続車との距離については、自分ではコントロールできず、適切な距離を確保するのは難しい面がありますが、後続車から追突されるのを防止するためには、停止するときは徐々にブレーキを踏んで後続車に停止の意図を早めに知らせる、高速道路などで前方の渋滞等により減速や停止するときはハザードランプを点滅させて後続車に知らせるなどのカーコミュニケーションを十分に活用することがポイントになります。なお、後続車が異常に接近してきた場合には、先に行かせるようにするのが安全です。

 

 「距離をとる」ということは、常に危険を遠ざけておくということであり、また、万一危険が発生した場合でも、それに対処できるだけの空間を保持しておくということです。交通量の多い道路では、十分な距離を確保することが困難な場合も多いのですが、できるかぎり距離をとるという姿勢に徹した運転を心がけましょう。
 
 
飛び石事故も距離をとることで防止できる
 前車のはねた小石が当たって前面ガラスがひび割れることがあります。これは高速道路でよく発生するといわれ、一般道路でタイヤに小石をはさんだ車が高速道路に入り、高速走行するうちに小石が抜けて後方に飛ぶためだといわれています。こうした飛び石事故も前車との十分な車間距離をとっていれば防ぐことができます。