安全運転のポイント

7月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成17年7月


 平成16年の全国交通事故統計(警察庁資料による)における、原付以上運転者(第一当事者)の法令違反別交通事故件数(人身事故件数)をみると、最高速度違反(スピード違反)は5,864件で、全体(901,119件)の約0.7%ですが、死亡事故となると、最高速度違反は711件で全体(5,864件)の約10.9%を占めています。これは死亡事故の10件に1件は最高速度違反によって発生していることを示しています。
 また、人身事故1,000件当たりの死亡事故件数を法令違反別にみると、最高速度違反の場合は121件となっており、平成16年の法令違反別の死亡事故件数が最も多かった「漫然運転」(人身事故:57,654件 死亡事故:930件)の約16件と比較すると、いかに最高速度違反が死亡事故につながりやすいかがわかります。
 そこで今回は、スピードの問題を考えてみることにします。

スピードを出すほど衝撃力は増大する
 車が衝突したときの衝撃力とスピードとの関係をみると、衝撃力はスピードの2乗に比例して大きくなります。つまり、スピードが2倍になると衝撃力は2×2=4倍、スピードが3倍になると3×3=9倍にもなるのです。スピード超過が死亡事故につながりやすいのはこのためです(図1)。
スピードを出すとカーブを曲がりきれない
 カーブを走行するとき、車が外側に飛び出そうとする力が働きます。これは遠心力によるもので、スピードが速いほど強く働き、衝撃力と同様にスピードの2乗に比例して大きくなります。したがって、カーブでスピードを出しすぎると曲がりきれなくなって路外に飛び出したり、ガードレールに衝突するという事故につながります。
スピードを出すほど見えにくくなる
 動きながら物を見たり、動いているものを見るときの視力を「動体視力」といいますが、「動体視力」はスピードが速くなると低下していきます。また、スピードを出すほど視野も狭くなって近くのものがぼやけて見えますから、危険の発見が遅れたり、見落としや見誤りなどが起こりやすくなります。
時速60キロでは1秒間に約17メートル進む
 スピードを出せば出すほど1秒間に車が走る距離は長くなります(図2)。
 時速30キロでは約8メートルですが、時速60キロでは約17メートル進みます。したがって、時速60キロで走行中に携帯電話を操作するなどして2秒間の脇見をすれば、その間に車は約33メートルも進みますから、前車の減速や停止に気づくのが遅れたり、歩行者や自転車の横断を見落としてしまう危険性が大きくなるのです。
車はすぐに止まれない
 ブレーキをかけても車はすぐには停止できません。ドライバーが危険を感じてから、ブレーキを踏み実際に車が停止するまでには、かなりの距離を要します。危険を感じてから、ブレーキを踏み実際に効き始めるまでに進む距離を「空走距離」、ブレーキが効き始め
てから、車が停止するまでに進む距離を「制動距離」、「空走距離」と「制動距離」をあわせたものを「停止
距離」といいますが、停止距離はスピードが速くなるほど長くなります(図3)。したがって、スピードに応じた十分な車間距離をとっていないと追突事故などにつながります。
図3は、乾いた舗装路面で急ブレーキをかけた場合の一例です。
安全走行のポイント
 スピードの出し過ぎは、運転にさまざまな危険を及ぼします。安全な走行をするためには、スピードをコントロールすることが重要なポイントとなります。特に、次の点を心がけましょう。
定められた最高速度を守るということが第一ですが、最高速度を超えなければ安全というわけではありません。例えば、雨天時に走行する場合や、生活道路や通学路を走行するときなどは、状況に応じて十分にスピードを落とす必要があります。
高速道路の走行時や夜間の走行時はスピードを遅く感じやすいため、知らず知らずのうちにスピードを出し過ぎてしまうことがありますから、ときどきスピードメーターでチェックします。
カーブでは必ず手前で十分に減速しておきます。(カーブの途中でブレーキを踏むと、スリップして対向車線にはみ出したり、ガードレール等に衝突する危険があります)。

 

 道路の整備が進み、車の性能もますますよくなっています。しかし、スピードの出しすぎは、これまでに述べたように大変危険です。天候や状況に合わせて、常に速度は控えめにすることが、事故を防ぎあなたや周囲の方の身体や命を守ることにつながります。また、控えめな速度で運転することは、環境にやさしい運転でもあります。日頃の運転をもう一度、見直してみましょう。

 

スピードと罰則
 スピード違反の反則金や違反点数については、超過速度の程度に応じて反則金や違反点数が定められており、30km以上40km未満の速度超過については、一般道路と高速道路では異なっています(表1、2)。
 下表で、一般道路の場合は30km以上、高速道路では40km以上の反則金の欄が空欄になっているのは、それが反則金の対象ではなく、「6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金」という刑事処分の対象になるためです。したがって、どんなスピード違反をしても全て反則金を支払えば済むと考えるのは間違いです。

酒気帯び点数の「A」は、呼気1 リットルにつき「0.15mg以上0.25mg未満」の場合、「B」は、呼気1 リットルにつき「0.25mg以上」の場合の点数を示しています。
反則金の額の欄の「二輪」とは、大型自動二輪車と普通自動二輪車をいいます。
反則金の額の欄の「原付」とは、原動機付自転車と小型特殊自動車をいいます。
酒気帯び点数の「A」は、呼気1リットルにつき「0.15mg以上0.25mg未満」の場合、「B」は、呼気1リットルにつき「0.25mg以上」の場合の点数を示しています。
反則金の額の欄の「二輪」とは、大型自動二輪車と普通自動二輪車をいいます。