安全運転のポイント

5月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成17年5月


 平成16年における全国の交通事故(人身事故)発生状況(警察庁資料による)をみると、最も多い事故形態は追突事2分に1件の割合で発生していることになります。
 そこで今回は、追突の事故事例をとりあげ、そこから原因や防止策を考えてみることにしましょう。

追突の事故事例
 いつも車を使用して営業活動をしているAさんは、会社や取引先から携帯電話に連絡が入ってくることも多かった。その日も、商談を終えて別な取引先へ向かうため車に乗り込もうとしたとき、取引先のB社からクレームの電話が入った。「後で調べて連絡します」と言って電話を切り、車に乗り込み出発したが、走行中もクレームのことが頭に残っていた。
 やがて、前方に交差点が見え信号は青だった。そのとき胸のポケットに入れていた携帯電話が小刻みに震えた。Aさんは走行中には携帯電話をマナーモードにしており、いつもは電話がかかってきても走行中には出ず、安全な場所で停止してから相手を確認し、かけなおすようにしていた。
 しかし、その日はひょっとしたら先ほどクレームのあったB社かもしれないと思い、Aさんは携帯電話を取り出してディスプレイを見た。思ったとおり、B社からの電話だった。電話に出ようかどうしようかと迷いながら、ふっと前方を見ると、いつのまにか信号が赤に変わって前車が停止しようとしていた。驚いたAさんは、あわてて急ブレーキをかけたが、間に合わず追突してしまった。(図1)
事故に至ったプロセス
事故に至ったプロセスを整理してみると、次のようになります。
携帯電話にB社(取引先)からクレームの電話が入った。
走行中もそのことを考えていた。
前方の交差点が見えてきたとき、携帯電話がかかってきた。
信号はまだ青で、前車はそのまま進行するものと思い込んでいた。
B社かもしれないと思い、携帯電話のディスプレイを見た。
B社だったので、電話に出るかどうか迷いディスプレイを見つめた。
前方を見ると、信号が赤に変わっていた。
停止した前車に追突した。
事故の原因
 以上のことから、この事故は取引先からのクレームが気にかかっていたために、最初に信号を確認しただけで、先行車がそのまま進行するものと思い込み、それ以降は携帯電話にかかってきた電話に注意を奪われディスプレイを見つめてしまい、信号にも前車の動きにも目を配らないまま交差点に接近したことが原因といえます。
 普段は、走行中には脇見をせず前方への注意を怠らないようにしていても、何かの事情が発生したときには(このケースではクレーム)、それが気にかかって前方への注意が欠けることがあります。それが追突事故の原因のなかでも大きな割合を占める脇見運転や動静不注視などに繋がります。走行中は運転に集中して、絶えず前方や周囲への目配りを忘れないようにしましょう。
 

[追突事故のパターン・原因・防止策]

追突事故のパターン
 追突事故の主なパターンは、次のようになります。
@ 交差点とその付近
黄信号や赤信号で減速や停止をした前車に追突する。
右左折するために減速や停止をした前車に追突する。(図2)
信号が青になり発進する際、前車の発進を確認せずに発進し追突する。
A 単路
道路左右の駐車場等に入ろうと減速または停止した前車に追突する。(図3)
横断歩行者のために減速や停止をした前車に追突する。(図4)
渋滞等で減速や停止をした前車に追突する。
追突事故の原因
 追突事故の主な原因としては、前車は「止まらないだろう」「減速しないだろう」という思い込みの意識を背景に、次のようなことがあげられます。
脇見(携帯電話の使用、カーナビの操作、伝票や地図、外の景色や看板等を見ていたなど)
動静の不注視(1台前の車や対向車に目を向けていて前車の注視を怠ったなど)
漫然とした運転(考え事をしていた、疲れていてボーっとしていたなど)
車間距離の不足
スピードの出し過ぎ
追突事故の防止策
 追突事故を起こさないためには、不測の事態にも慌てずに余裕を持って、停止や回避ができる速度の選定およびその速度に応じた十分な車間距離の確保とともに、注意を偏らせず運転に集中することが重要です。
(1) 運転する前には
口論や腹を立てるなど、その後も気をとられるようなことはしないよう心がける。
「運転以外のことを考えない」「脇見運転事故のもと」と口に出して運転を始める。
(2) 走行中は
気持ちに余裕があるときこそ、運転に集中する。
一つのものに注意を集中させず、あちらこちらを意識して見る。
さらに、具体的な交通の場面では
交差点に近づいたら、スピードを落として車間距離を確保し、前車の動き(特に右左折車)や信号などに十分目を配る。
青信号での発進時は、必ず前車の発進を確認し、一呼吸おいてから発進する。
単路でも油断せず、前方の状況に目を配り、前車が道路の左右の施設等に入るためにウインカーを出したときは、減速や停止をするかもしれないと考えて、車間距離を確保しその動きに注意する。
減速や停止した前車を避けようとの強引な進路変更は、後続車と衝突の危険があるので注意しましょう。
前方に横断歩道があるときは、横断歩行者等の有無を確認し、横断歩行者等がいるときは、前車が減速や停止するかもしれないと考えてスピードを落とす。
 その他、脇見につながる「伝票や地図を見る」「缶・ペットボトルなどの飲み物を飲む」などの行為をしないようにしましょう。もちろん、携帯電話を手に持っての使用(通話やメールの送受信、ディスプレイ部分の注視等)は厳禁です。