安全運転のポイント

1月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成17年1月


新年明けましておめでとうございます。今年も安全運転で無事故を達成していきましょう。
さて、新年のスタートにあたり、安全運転の実行の誓いを新たにしていただくため、安全運転に最も重要な「見る」ということを取り上げました。われわれは「見る」ことがなければ当然運転はできません。しかし、ただ「見る」のでなく「正しく見る」ことが実行されないと事故になります。実際に「正しく見なかった」ための事故が多くまた増えているのです。

「見る」ことの不完全な事故が増えている
通常、ドライバーは交通場面や景色などを視野に入れ情報を捉えながら(視覚による認知)、わき道からの他車の流入などのさまざまな事態等に備えて運転行動を行っています(判断、操作)。また、視野のなかで未知・危険の情報を察知した場合にはそれを注視して確かめようとします。運転中はこれらが繰り返し行われます。
しかしながら、この10年間のデータによると"はっきり確かめなかった(安全不確認)"によるものが約2倍、"見たが他に目を移してしまった(動静不注視)"も1.7倍強などと大幅に増加しています。(図1)また"見るという意識を失った(漫然運転)"、"見るべき対象を見なかった(わき見運転)"も増加傾向にあります。いかに、見ているが不完全であることが多いかということがわかります。
逆に事故防止のため、運転に「正しく見る」ことが極めて重要であるということです。

「見る」ことの重要性
見ることの重要性については「目に写ることと見えることは別であり、見ようと意図するから見える」「単に視野を見回しても見たことにならない、見るためには見るべきものに目を向けて、しかも注意を向けなければならない」そして「見るということは受動的なことでなく、積極的なことである」などの専門家の指摘に尽くされていると思われます。
そこで、つぎにこれらの重要性を認識したうえで、正しく見るために行わなければならないことおよび留意点について考えてみましょう。
見るというのは、「必要な情報をとる」ことですから、対象を視野に入れることになりますが、ここには幾つかの問題があります。
「正しく見る」ためには
■動体視力を使っている
視力とはものを見分ける能力ですが、運転では殆ど動体視力で見ることになります。動体視力は、通常静止視力より低く、また動きが早ければ早いほど低下するものですから、基本的に見えている事象が確実に見えているわけではないことに留意しましょう。従って確実に見分けるためには運転中の速度のコントロールが極めて大事になります。
なお、視力は加齢によって低下しますが、動体視力は、静止視力よりもその低下の度合いが大きいので、高齢者はとくにこのことを意識しておく必要があります。(図2)
■こまめに動かし広い範囲を見る
視野とは目を動かさずに見える範囲をいいます。両眼での視野は約200度で、そのうち色彩まで確認できるのはそれぞれ左右35度までと限られています(図3)。特に、動いている状態で、注視点の周辺の情報を発見できる範囲の有効視野はさらに狭いものです。広い範囲が見えているような気がしていても、実は本当に見えている範囲はそれほど広くはないのです。
従って、交通の場面の状況を正しく把握するためには、こまめに眼を動かして、(ミラーも活用しながら)前後左右の広い範囲を視野に入れていかなければなりません。
■中心視で確認する
視野に入る様々な情報の中で、これは、というものについてより詳しい情報を取ろうとすることが運転では必要です。
それには、目を向けて中心視(図4)で見ようとしないと確認はできません。周辺視ではぼんやりとしか見えていないのです。さらにはっきり確認するためには時間をかけて見ることも留意すべきです。したがって停止すべきところや確認が必要な場面では「止まって(目を向けて)見ること」がもっとも確実な方法であるということができます。
■ひとつのものを見すぎない
人は見るべき対象を2つ以上を同時に注視できません。同時に見ているように思えても、実際には短い時間で視線を移動させているためにそのように感じられるだけで、各瞬間には一つの対象しか見えていないのです。たとえば携帯電話のディスプレイをみているときは前方の信号は見えてるようで見えていないのです。したがって、1点だけの注視は危険の見落としや発見の遅れにつながりますので、ひとつのものを注視しても、留めることなく、目を回していく(注視先を移していく)必要があります。


正しく見るために心身の健康な状態での運転が大前提です。疲労は、目にもっとも影響します。とくに動体視力を低下させます。また、悩み事や考え事は見る意識を阻害し、交通の場面から情報をとることに集中できず、まさに「心ここにあらざれば見れども見えず」という事態になりかねません。日頃の健康に対する自己管理が最も大切なのはいうまでもありません。