安全運転のポイント

7月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成16年7月


 「電動車いす」は、これまで身体障害者を中心とした移動手段として利用されてきましたが、最近は歩行に困難を感じる高齢者の社会参加手段としても普及してきています。出荷台数も年間約3万台のぺースで増加しており、今後ますますの普及が見込まれます。一方、それにともなって、「電動車いす」に係わる交通事故も増加しています。(財)交通事故分析センターのまとめによると、電動車いす利用者の交通事故死傷者数は、平成2年中に36人だったものが、平成15年には254人と、年々増加傾向にあります。(図1)事故の多くは乗用車などの車両との接触ですので、今後ドライバー側からの安全対策が強く求められてくると考えられます。

電動車いすについて
 電動車いすは、「自操用」と「介助用」に大きく分類されます。型式分類は表1 のとおりで、自操用ハンドル型が最も多く利用されています。(図2参照)構造等の基準は、道路交通法施行規則に定められており、それによると
「長さ120cm・幅70cm・高さ109cm」を超えないこと
原動機として電動機を用いていること
速度も時速6キロ以下であること

「電動車いす」は歩行者
 道路交通法において、「電動車いす」は「身体障害者用の車いす」に含まれ(第2条第1項第11号の3)、「歩行者とみなす」と規定されています。(第2条第3項第1号)
 このようにみなし歩行者となりますが、歩行者とちがう特徴があります。
 
電動車いすの特徴
@ 乗車位置が低い
 基準上、高さ109cmを超えないものと規定されていますから、着座して操作すると利用者の視線は大人の歩行者の視線よりも低くなります。そのため周囲の交通状況を十分には把握しにくい面があります。(一方、ドライバーから見れば、「電動車いす」は小さいために発見が遅れたり、死角に入って見落としてしまうおそれがあります。)
A 機敏な対応ができない
 「電動車いす」の最高速度は時速6 キロで、急にはスピードをあげられない構造であるため、利用者が危険を発見してもスピードをあげて危険を回避することは困難です。また、こうした構造上の特徴に加え、利用者の多くが身体障害者や高齢者であることから状況に応じた機敏な対応もとりにくいといえます。さらに、走行中は運転操作に注意を集中していることが多いため、周囲に対する十分な注意が行き届かないこともあります。
B 車道に出てくることがある
 「電動車いす」は「歩行者」とみなされますから、歩道を通行するよう定められていまが、現実には歩道には看板や放置自転車などの障害物が多いことや段差があることなどから、車道に出てくることを余儀なくされることもよくあります。(事故事例参照)

事故事例

 午前11時頃、乗用車を運転して片側1車線の住宅街の道路を走行していたAさんは、前方に高齢者の乗った電動車いす(Bさん)を発見しました。しかし、電動車いすは歩道を通行していたために、Aさんは特に注意もせず、スピードを落とすこともなく進行しました。ところが、歩道の前方に自転車が放置されていたため、電動車いすのBさんはそれを避けようとして車道の状況を確認しないまま歩道から車道に出てきました。それに気づいたAさんはあわててブレーキを踏みましたが、接近していたため間に合わず電動車いすをはねてしまいました。
 
ドライバーとしての注意点
 今後、高齢者人口の増加に伴って、「電動車いす」の利用者が増加するものと予測されます。「電動車いす」は利用者や構造上の特徴から、周囲の状況に的確に対応して危険を自ら回避していくということが著しく困難です。
ドライバーの皆さんは、「電動車いす」の事故防止のため、幼児や高齢者に対するときと同様の思いやりのある態度で、特に次の点に十分注意する必要があります。
@ 歩行者保護最優先
 「電動車いす」は「歩行者」です。電動車いすが視野に入った時は、最大限に動静を注視する心づもりが必要です。
A 安全運転の基本の徹底
 歩行者保護のため、「電動車いす」に接近したり、その側方を通過していくときは安全な間隔を保つことはもちろんのこと、交差点、横断歩道等での「減速」「徐行」「一時停止」などの基本を確実に行いましょう。
B 危険の予測
 「電動車いすのほうが止まってくれるだろう」といった相手に期待した行動をとるのは大変危険です。「電動車いすはこちらに気づいていないかもしれない」「電動車いすは止まらないかもしれない」と考えて、常に危険を予測した運転をしましょう。