安全運転のポイント

1月の安全運転のポイント

いい運転、ハートフル
平成16年1月


 運転中、ドライバー同士が互いにコミュニケーションを行うことはスムーズな交通に欠かせません。自動車の場合、言葉によるコミュニケーションができないために、車両の装置による合図や身振りによって、意志疎通を図ることになりますが、これらは総称して「カーコミュニケーション」と呼ばれています。今回はこのカーコミュニケーションについてまとめてみました。

公式な合図と非公式な合図
 カーコミュニケーションのための合図は大きく2つに分けられます。ひとつは右左折時のウインカーによる合図のように道路交通法で決められている公式の合図であり、ひとつは渋滞を発見したときのハザードランプの点灯のような非公式の、ドライバーの間で自然発生的に生じて習慣的に行われている合図です。
 
公式な合図によるカーコミュニケーション
 道路交通法では、「左折し、右折し、転回し、徐行し、後退し、又は進路変更するときは、方向指示器又は灯火により合図しなければならない」とされています。これらが公式の合図ということができます。
 カーコミュニケーションは、発信側の合図とその意味を受け手が正しく理解すれば成立します。公式合図は、免許取得時に教育が行われ、発信側、受け手側に共通理解がありますので、コミュニケーション上の問題はほとんどありません。
 ところで皆さんは、日常の運転で停止、徐行、後退の時、意識して合図を出し、コミュニケーションしていますか。
道路交通法での合図の方法は
徐行か停止をするとき ・・・・・ ブレーキ灯をつけるか、腕を車の外に出して、斜め下に伸ばす。(図1)
後退するとき ・・・・・ 後退灯をつけるか、腕を車の外に出して斜め下に伸ばし、手のひらを後ろに向けてその腕を前後に動かす(図2)
 となっています。ブレーキを踏めばブレーキ灯が、バックギアに入れれば後退灯が自動的に点灯します。しかしそれは、単に自分の運転操作の結果でなく、他のドライバーへの合図であると明確に意識して行うことが大切です。したがって無意味なブレーキングはさけるとともに、ブレーキを数回に分けて踏む、追突防止のためのポンピングブレーキは、後続車への積極的な合図とコミュニケーションとして行った方が良いといえます。
 なお公式合図としての手による合図もしっかり覚えておけば、夕日の反射でウインカーが見にくい場合など、灯火の故障の時に限らず、ドライバー同士のコミュニケーションに役立ちます。
 
非公式な合図によるカーコミュニケーション
 自然発生的な、非公式な合図によるカーコミュニケーションで、日常の運転のなかで多用されているものには、以下のようなものがあります。
@ 進路を譲るパッシングライト
A 渋滞を発見したときのハザードランプ
B 割り込みをさせてくれたあとのハザードランプ
C 夜間の、すれ違いで道を譲るヘッドライトの消灯
D 入れてもらうとき手をあげる
 非公式な合図は、公式合図がカバーできないようなコミュニケーションを可能にするという、安全で円滑な交通のために一役買っているという好ましい面と、合図の意味がドライバーの共通認識になっているとは限らず数の解釈が成り立ち、取り違いにより重大事故にもなるという危険な面があります。たとえば、上記のAやBはかなり有用なものとして普及してきています。一方、パッシングライトによる合図などは、どうでしょうか。
 帝塚山大学の蓮花教授の研究では、対向車からのパッシングライトの点滅には「来るな。自分が先に行く」、「譲ります。お先にどうぞ」、「あなたのヘッドライトがついています」、「前方で取締りが行われています」、「こんにちは」などの多様な意味があるとされています。そうすると発信する側が「自分が先に行く」という意図でその行為を行ったとしても、受け取る側が「お先にどうぞ」という意味に解釈すれば、大きな事故になりかねません。また、相手が初心運転者の場合は、メッセージの意味そのものがわからないという場合もあります。
 このように非公式合図は、教習所などで公式に教育されるものでないため、メッセージを発信する側の意図が、必ずしも相手に正確に伝わるという保証はなく、コミュニケーションが成立しない場合があることを認識する必要があります。実際の場面では、相手車の合図を見て瞬間的に判断・行動するのではなく、前後の状況をよく読みとり、行動することが大切です。
 
クラクションによるコミュニケーション
 クラクションは公式および非公式な合図として使用されています。公式には、道路交通法で、クラクションは所定の標識のある場所や区間で見通しのきかないところ、また危険回避のためやむを得ない場合以外では鳴らしてはいけないと定められています。しかし非公式としては、お礼や、不満などの感情表現に使われています。
 蓮花教授の研究によると、クラクションの使い方には、その長さにより
@ お礼などの社会的エチケットのクラクションでは0.1秒ほど
A 注意を喚起し、安全確保をするためのクラクションでは0.3秒程度
B イライラや不快感などの感情表現のクラクションでは0.5秒以上
 の3区分がみられたということです。しかし運転経験が長い者同士では、使い分け、聞き分けができるとしても、初心者や一部の運転経験者はその使い分けが不十分で、無頓着のまま長く鳴らしがちの人があり、この場合聞いた相手は攻撃的な感情表現と受け取りやすいなどクラクションによるコミュニケーションは、問題があるとしています。
 クラクションという音による合図は刺激性が強く、使い方を誤ると攻撃的な意味と受け取られるおそれがあることを考えると基本的には避けるべきで、使用する場合には細心の注意を払う必要があります。