安全運転のポイント

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 運転は、「認知」、「判断・予測」、「操作」の繰り返しと言われ、ドライバーは常にこの手順を踏んで自動車を運転しています。事故は、これら一連の手順のうちのどこかでミスをすることにより起きると考えられます。では、現実の事故ではどうなっているのでしょうか。一体どの段階で、どんなミスが、何故、起きているのでしょうか。これについて、(財)交通事故総合分析センターで人的ミスの状況を分析し、その特徴をまとめていますので紹介します。
事故調査事例に見る人々のミスの特徴
   (財)交通事故総合分析センターが分析に用いたデータは、’97年に起きた300件の交通事故です。図1は、300人の当事者Aと225人の当事者B(衝突の相手)のうち、何らかのミスがあった人の割合を示したものです(300件中75件は車両単独事故のため、衝突相手である当事者Bの数は225人)。これによると、当事者Aはほぼ全員の298人が、当事者Bは約87%の196人が何らかのミスを犯しています。
 図1で見るとおり当事者Aの場合は、認知段階のミスがもっとも多く、操作段階のミスは少なくなっています。事故発生の原因は認知ミス、つまり見るべき相手方、対象物の「見落とし」であることを示しています。一方、当事者Bは、認知ミスよりも判断・予測ミスの割合の方が高くなっています。これは、相手方、対象物の動静に対する判断ミスが事故に結びついていることを示しています。
当事者Aでは、一人当たり約3件
当事者Bでは、一人当たり約2件のミス
   認知ミスや判断・予測ミスなどはそれぞれ単独で起きるのではなく、大部分の事故では認知ミスと同時に、判断・予測、操作段階でもミスを犯しています。図2は事故に遭った当事者が一人当たりどれくらいの数のミスを犯しているのかを示したものですが、当事者Aでは一人当たり約3件、当事者Bでは一人当たり約2件のミスを犯しています。言い換えますと、事故を避けるチャンスは2回以上あることになります。では、次に認知と判断・予測の各段階でどんなミスがあり、その要因は何かを見てみましょう。


認知ミスと要因
   図3は、当事者Aが認知ミス、つまり見落とした対象と、その要因をまとめたものです。認知ミスした対象では「交差直進者(交差点で交差道路側にいる車両または人)」や「対向直進者」が多くなっています。これらのミスが「出合頭事故」「右直事故」につながっているといえます。では、何故見落としたのでしょうか。見通し不良の場所で「見ようと思って見えなかった」ミスもありますが、全体的に共通して「ぼんやり/考え事」、「思い込み」が多くなっているのがわかります。ぼんやり/考え事をしていたため「見ようと思えば見えていたのに見なかった」「交通量が少なくてめったに車が来ない」「この場所では相手はいつも一時停止する」と知っているため、安全確認する必要がないと思い込むことでミスを犯していることが多いのです。
判断・予測ミスと要因
   図4は、当事者Aの判断・予測ミスの内容とその要因についてまとめたものですが、判断・予測ミスの内容では、交差点は認知したが「交差道路には誰もいないだろう」、「自車の速度に問題はないと思った」などが多くなっています。これらの判断・予測ミスは自分に都合の良いように思い込んでしまうことに原因がありそうです。また、ミスに至った要因では全体的に「思い込み」が多く、約60%を占めています。走行中、「自分の方の道路が優先道路だから相手は出てこない」、「自分の方の信号が青だから相手は出てこない」のように思い込んでのミスが多いのです。
ミスを防ぐポイント
   以上のように人はどんなミスをして事故を起こしているのか−主として「思い込み」による認知ミスと判断・予測ミスが多い−を見てきました。このことから、ミスを防止し、事故を起こさないようにするために、特に以下の点を踏まえて運転することが必要です。
(1) 運転するときには運転に集中する。
(2) 信号や一時停止等のある交差点で、自分が優先であることが明らかであっても、必ず他車の確認をする。
(3) 見通しが悪く誰もいないような交差点でも、「誰もいない」と思うのではなく「見えないけれど誰かいるかもしれない」といった防衛運転をする。