安全運転のポイント

事故

 最近、いわゆる大きな「いびき」とそれに起因する「居眠り運転事故」が話題となっています。居眠り運転による事故は、統計ではとりまとめていませんが、居眠りが運転にとって大敵であることは、ドライバーの皆さんなら周知のとおりです。(社)日本交通科学協議会常任理事であり医学博士の小野昌子医師は、大きな「いびき」と「居眠り」は相互に関係があり、そこには「睡眠時無呼吸症候群」と名づけられた病気が存在すると指摘しています。そこで、今回は睡眠時無呼吸症候群の特徴や対策などについてお知らせします。
睡眠時無呼吸症候群とは?
   睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome、以下「SAS」と記します)とは文字通り、睡眠中呼吸停止を繰り返すことを言います。SASの人の特徴としては、(1)激しい「いびき」をかくこと(2)睡眠中に何度も呼吸が止まること(1回10秒、1時間に5回以上)(3)そのため日中耐え難い眠気に襲われるということ、があげられます。
「いびき」とSAS
   「いびき」は上気道(鼻・のどから気管にいたるまでの空気の通り道)が、何らかの原因で狭くなった状態で、無理矢理呼吸しようとするために起こります。
 一般的に、睡眠時、上向き、口を開けた状態で寝ることなどで筋肉のゆるみにより上気道は狭くなりますが、健康な人はこの程度では問題になりません。肥満などにより気道が狭くなっている人はいびきをかきやすくなります。そして、大きないびきで、不規則な毎晩かくいびき。せわしいいびき。呼吸が止まりいびきは止むが、呼吸再開と同時に大きないびきが始まる状態が一晩中繰り返されるとSASと考える必要があります。

「いびき」やSASを起こす原因
   全身的なものとしては肥満、首太型、飲酒、過労など。局所的なものには呼吸筋の老化、鼻孔や口腔、咽頭などの上気道を狭くする病気の人、下顎の小さい人などがあります。
無呼吸が原因する居眠り
   SASの人は、睡眠中に息を吸うと気道がピタリと閉じて、空気は通らなくなり、同時に「いびき」もパタリと止まって無呼吸状態となります。しばらく無呼吸が続くと血液中の酸素濃度が減少し、二酸化炭素濃度が増え窒息状態となり苦しくなり、本人の体は、苦しそうに動いています。この時、脳はめざめ、睡眠が中断されることが一晩中繰り返されています。このため睡眠が浅くなり、睡眠不足となって昼間に眠くて仕方がなくなるのです。
SASと交通事故
   SASは自覚症状が乏しく、一緒に寝ている家族や、旅行で宿泊を共にした人から「いびき」の異常や呼吸の止まることを指摘され、受診するケースがほとんどです。自覚症状といえば、日中の耐え難い眠気と戦っていることです。これは重大な事故につながる恐れがあります。現実に、信号待ちや渋滞時に瞬間的に眠って、ブレーキペダルから足が離れて前車に追突する軽いケースから、長距離トラックのドライバーが高速道路を走行中、居眠り運転事故で死を招くケースなど、居眠りが原因で事故が発生しており、この中にSASのドライバーが相当数いると考えられます。
家庭でできる無呼吸や「いびき」の対症療法
   SASは治る病気です。交通事故等を起こしかねない危険な病気ですから、疑いがあれば放置せず医師に相談すべきです。
 またSASの予防、対症療法として、(1)横向きに寝る癖をつける(2)鼻で呼吸する習慣をつける(3)アルコール・缶コーヒー、睡眠薬、鎮痛剤に注意する、ことなどがあります。
 なお、下表のような簡易な自己診断表もあります。

⇒世界中で普及している昼間の眠気を測定できる簡易な自己診断法です。
合計数値が10点以上になれば、昼間の眠気が認められ運転には危険です。このような人は、治療をしてからハンドルを握るようにしましょう。